かなり変わった経歴ですが、ご覧下さい。
あ、Amazonでようやく取り扱いが始まりました。
厚い本なので高めになっていますが、今度の「心理療法の人類学」入門セミナーで2割引き3000円台で買えるのです(宣伝でした)!
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著者について
本書の著者ジェームス・デイビスは、1973年にイギリス北部のサウスポートで生まれた。ホームページ(https://jamesdaviesauthor.com/)を見るとわかるように、彼はとてもハンサムだ。
それもそのはず、デイビスはもともとプロのバレーダンサーだった。10歳の頃からバレースクールに通い始め、17歳の時には若手ダンサーの賞に輝いた。
その後、ニューヨークにてバレーの専門教育を受け、18歳でロンドンの国立劇場の舞台に上がるようになった。プロダンサーとしては輝かしいキャリアと言っていいだろう。
しかし、20代前半にデイビスは挫折する。いくつかの「人生の問題」が重なり、デイビスは情緒的に難しくなり、精神的危機に陥る。
悩み苦しむその最中に、心理療法と最初の出会いを果たす。傷ついた自分と向き合うために、精神分析、ユング派、そして人間性心理学の文献を読み漁るようになり、そして実際にセラピーを受け始める。
その帰結が、バレーダンサーとしてのキャリアの断念であった。
デイビスはバレーから離れた。そして、その代わりにロンドン大学の東洋アフリカ研究学院で人類学を学び始めることになった。
人類学者としての再出発をすることになったのだ。そのときに出会ったのが、ポストモダニズムの思想であり、それがデイビスのその後の仕事の基盤となった。
その後、デイビスは順調に人類学者としてのキャリアを歩んでいく。
本書の基になった論文でオックスフォード大学より博士号を授与され、処女作である本書を皮切りに、立て続けに「The Importance of Suffering: The Value and
Meaning of Emotional Discontent (London: Routledge)2012年」を発表する。
そして、2013年に発表した「Cracked: Why Psychiatry is Doing More Harm Than
Good (London: Icon Books)」はベストセラーとなって、広く読まれるに至っている (とても挑戦的なタイトルである)。
そのほかにも、アーサー・クラインマンやタニヤ・ラーマン、ヴィンセント・クランパザーノといったスター人類学者を寄稿者に迎えた「Emotions in the Field: The Psychology and
Anthropology of Fieldwork Experience (Palo Alto: Stanford University Press)2010年」の編著者も勤めるなど、デイビスは将来を担う気鋭の人類学者であり、現在はローハンプトン大学で準教授の地位にある。
しかし、それだけではない。彼にはもう一つの顔がある。そう、彼は心理療法家でもある。
本書で再三強調されていたのは、心理療法に癒された者が、心理療法家の道を志すということであった。
デイビスもまた例外ではない。青年期危機を心理療法によって切り抜けた彼は、人類学の修士号を得た頃から、Westminster Pastoral Foundationにて心理療法家のトレーニングを受け始める。
その後もRegents collegeとMetanoia Instituteという統合的心理療法の訓練機関でトレーニングを続け、心理療法家の資格を得ている。
現在はNHSで臨床をしながら、エビデンスベイスト精神医学協会の創設に関わるなど、心理療法界のインサイダーとして活動を続けている。
デイビスは心理療法と人類学の二つに癒された。
だから、彼は人類学者であり、心理療法家でもある。しかし、当然のことではあるが、そのような二重のアイデンティティは葛藤をもたらす。
しかも、人類学者であり心理療法家でもあることは、歯医者でありながらミュージシャンであることとはちょっと違う。あるいは、お笑い芸人でありながら、映画監督であることともちょっと違う(そういえば、精神科医でありながら、ミュージシャンである偉大な先達もいる)。
それらはそれらで、二足の草鞋を履くことの葛藤があり、自身のアイデンティティや時間とエネルギーのやりくりについて思い悩むに違いないけど、最終的に「どっちも」であることが可能だ。歯医者をすることによって、音楽を傷つけることはないからだ。
だけど、人類学者であることと心理療法家であることは違う。
それは左手がやっていることを右手で否定するようなものだ。
なぜなら、左手が「本質」に基づいて仕事をしているのに、右手は「文脈」を問うてやまないからだ。
そこには葛藤がある。だから、デイビスは「心理療法家の人類学」を書くことになった。そしてそれが可能だった。彼は心理療法家でもあったからだ。
そう、デイビスは右手を左手にぶつけてみた。手と手を合わせると、どんな音が鳴ったのか?
続く
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