今回は、モヤモヤには二種類あるという話し。
モヤモヤは不思議と消えていく
最初に少しだけ復習しておきましょう。
モヤモヤは生き方と環境の不一致による傷つきから発生する。
だからこそ、モヤモヤはただ辛いだけじゃなくて、人生を変化させるための原動力にもなる。
以上が、ここまで書いてきたモヤモヤのメカニズムでした。
ここから得られる重要な学びは、人生が変化するならば、当然モヤモヤは消えていくということです。
生き方と環境がある程度調和して、傷つきが減じていくからです。
そういうモヤモヤの消失は、ほとんどの場合、ゆっくりと起こります。
逆に言うと、劇的にモヤモヤが消えるというのはちょっと危ういことです(高額商品ほど、「劇的!」と言いますよね)
だって、生き方も環境も基本的にゆっくりとしか変化しないものじゃないですか。
だから、大体のところ、モヤモヤは「気づけば」なくなっているものです。
皆さんも「あのときはあんなにモヤモヤしてたのに、最近そうでもないな」と感じることってありませんか?
そういうとき、私たちは不思議な気持ちになります。何が変わったのか、なぜ変わったのかよくわからないからです。
小さな変化×時間=大きな変化
実際、カウンセリングをしていると、「なぜかわからないけど、でも、最近調子がいい」という話をよく聞きます。
クライエントさんはゆっくりと起こるご自身の小さな変化に気づきにくいんです。
でも、カウンセラーの立場からだと、ご本人よりは、少しだけ、その変化が見えやすいものです(すぐそばにいて、かつ外から見ることができるからかもしれません)。
彼女は以前より少しだけ人に頼れるようになっています。
彼が何かを決めるときに出てきていた不安は少しだけ減じています。
あるいは、彼女を囲む環境は、ほんのちょっとだけ以前より寛容になっています。
そして、周囲の人はちょっとだけ彼のことを理解するようになっていたりします。
変化は小さく起こります。そしてそれは本当に貴重なものです。
私たちは苦しくなると、楽になりたいから、ついつい革命的な大変化を望んでしまいます。
だけど、私たち自身も、環境も、大きく変化することは本当に稀です。
というのも、現状って、それなりに必然性があって作り上げられたものだからです。自分自身についても、世の中も、簡単に動かせるようなものじゃない。
ですから、私たちの人生で起きる変化のほとんどが、ごくごく小さなつつましいものです。
だけど、小さな変化が起きて、そこに時間が作用することで、人生は確かに変わっていきます。
「小さな変化×時間=大きな変化」となるからです。
だから、カウンセリングは時間がかかります。より正確に言うと、時間を味方につけて、時間の力を使えるのがよいカウンセラーだと、私は思います。
パンを作るのに似ています。イースト菌を入れるまでは職人がやるにしても、パンをふんわりとふくらませるのは時間の仕事です。
時間が癒す。カウンセラーをしていると、心底そう思います。
さて、そうやって、生き方と環境の不一致が微調整されていきます。
すると、モヤモヤは煙のように少しずつ薄らいでいく。
そして、気づけば楽になっている。人生は新しい局面に入っている。
普通のモヤモヤは、このようにして発生して、そして消えていきます。
だけど、生きづらい人の場合は少し違います。
そこにあるのは、「慢性的」なモヤモヤだからです。
ようやく本題にたどり着きそうです。
慢性モヤモヤ
しつこいのは重々承知なのですが、もう一度だけ繰り返させてください。
生きづらさとは、慢性的にモヤモヤしてしまうことである。
「慢性的」。ここがポイントです。
そう、モヤモヤには、「急性」モヤモヤと「慢性」モヤモヤの二つがあるのです。
ここまで書いてきた通り、急性モヤモヤとは人生のある時期に現れ、そして生き方と環境が微調整されると消えていくものです。
だけど、慢性モヤモヤは違います。
それは強弱の波はあるにせよ、私たちから離れることなく、どこまでも付きまとってくるタイプのモヤモヤです。
慢性モヤモヤは、種火のようにいつも心のどこかで燃えていて、ときどき大炎上して、私たちを困らせる。
いったんは消火したと思うのだけど、実は心の奥でひそかに燃え続けていて、私たちを慢性的にモヤモヤモヤモヤとさせる。
皆さんの人生にも、何度か転機や変化があったはずです。
進学したり、退学したり、卒業したり。
就職したり、転職したり、退職したり。
結婚したり、離婚したり、再婚したり。
そして、それらに伴い、少し成長したり、しなかったり。
そう、湧いてくるモヤモヤをなんとかするために、皆さん、必死にもがいてきたかと思います。
環境を変えることも、生き方を変えることもやってみて、その結果、人生が新しい局面を迎えたということが何度かあったのではないかと思います。
人生は確かに変化した。3年前の自分とはやっぱり違う。
だけど、モヤモヤが消えない。結局自分はいつもモヤモヤしている。
ここです、ここに慢性モヤモヤがあります。
そして、それこそが、私たちに生きづらさを感じさせる当のものなのです。
モヤモヤ発生装置
繰り返しましょう。
いくら環境を変えても、いくら生き方を変えても、なぜか最後はモヤモヤしてしまう。
いろいろなことが変わっていったのに、なぜかいつものモヤモヤが消えない。
だから、生きづらい。
なぜでしょうか?
生き方と環境の不一致がモヤモヤの原因のはずなのに、なぜ慢性モヤモヤはそれらを調整しても消えてくれないのでしょうか?
こんなに頑張っているのに、なぜ慢性モヤモヤはいつまでも、私たちのところを離れようとしないのでしょうか?
消えたと思っても、すぐに湧いてくる慢性モヤモヤ。
それはどこから来るのでしょうか?
まるで心の中にモヤモヤ発生装置があるかのようではないでしょうか?
そうです。このモヤモヤ発生装置こそが問題です。
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