年末なのでボツ原稿リサイクルをしています。
前回「生きづらさの心理学①-モヤモヤとは何か」の続きです。
モヤモヤによって、人は生き方を調整しようとするという話です。
*********************
心を病むのは人生の一コマ
いわゆる、「心を病む」という言葉が使われるのは、そういうときです。
生き方と環境の不一致が起きているときに、私たちはモヤモヤします。
そして、そういうことが積み重なっていくと、ちょっとずつ自分に変化が起きてきます。
イライラしたり、落ち込んで力が出てこなくなったりします。悲しくて、胸が痛くなることだってあります。
思い通りにいかないことが積み重なる時期に、私たちは心を病みます。
心にかかる負担が許容量を超えて、うまく心が動かないということが起こるのです。
しかし、「心を病む」ということは、特殊な人に起きる、特殊なことではありません。
私たちみんなが、人生で何度か「心を病む」ことを経験します。
それは生きている限り、ほとんどの人が直面することになる人生の一コマです。
だって、人生は思い通りにいかないんですから。
そもそも、生きるというのは、基本的には失い続けていくプロセスです。
ガッカリするのが、僕らの人生の基本設定です。
もちろん、ときどき何かを手に入れることだってありますけど、こうあってほしいと思ったことが、そうはならないことに何度も直面して、そのたびにそれを受け入れていくことが繰り返されるのが人生です。
ほら、今この瞬間にも、時間は流れて、私たちの体は若さを失っていっていますよね(なんてことだ!)。
だから、私たちはモヤモヤしますし、みんなときどき心を病む。
だけど、「モヤモヤする」って、実は悪いことばかりではありません。
これが、この本でお伝えしたい、とても大切なメッセージの一つです。
そう、心を病む時期というのは、実は人生の転機の時期であり、成長の時期でもあるのです。
物語はモヤモヤから始まる
皆さん、ご自身が心を病んだ時期のことを思い出してみてください(一つや二つありますよね?)。
それはモヤモヤする辛い時期であったと同時に、皆さんにとって、転機や成長の時期ではなかったでしょうか。
その時期に、少し大人になったり、見える世界が変わったり、人間関係が変わったりはしなかったでしょうか。
なぜか?
なぜ心を病むことと、人生の転機・成長が関係しているのか?
それは、生き方と環境がズレているとき、私たちはなんとかそれを調整しようとするからです。
人間は基本的に保守的で、変わらないことを好む生き物です(だから、コンビニにいくと、大体同じ味のおにぎりを選んでしまいます)。
だけど、辛いときには、私たちは変わろうとします。
モヤモヤするとき、私たちはそれが辛いから、なんとか生き方と環境のズレを修正しようとするのです。
そのとき、環境の方を変えれば(たとえば、職場を変えたり、引っ越しをしたり、あるいは家族から離れることもあります)、それは人生の転機になります。
逆に、生き方を変えようとするならば(人との付き合い方を変えたり、新しい目標を見つけたり)、それを人は成長とか成熟と呼びます。
たいていは、その両方が少しずつ起こります。
ですから、小説を読んだり、テレビドラマや映画を観てみたりすると、物語の最初の段階で、主人公はたいていモヤモヤしています。
「なんかうまくいってねえなぁ」という感じがあって、そこから主人公は冒険に飛び出していったり、試練を潜り抜けたりして、成長を遂げるわけです。
ほら、「千と千尋の神隠し」の冒頭は、親の引越しのせいで主人公の千尋ちゃんがモヤモヤしているシーンでしたよね。
そして、終わりのシーンでは、千尋ちゃんはちょっと大人になっていました。
そうです。モヤモヤは人を変える。物語はモヤモヤから始まる。
生きづらさとは?
ここまで、モヤモヤが生き方と環境の不一致による傷つきであること、そしてそれが誰の人生にも訪れるありふれたものであり、モヤモヤから転機や成長がもたらされることを書いてきました。
このことが、生きづらさを理解するための最初のステップです。
だけど、もしかしたら、この著者は綺麗ごとを書く人だなと思われたかもしれません。
生きづらさから人間が成長するんだなんて、まるでジムトレーナーが「筋肉痛は筋肉が作られている証拠だ」と言っているみたいなもんだと思われたかもしれません。
誤解をさせたらすみません。
私の言いたいことは、ちょっと違います。
「モヤモヤ=生きづらさ」ではないからです。
最初に私は以下のように書きましたよね。
生きづらさとは、慢性的にモヤモヤしてしまうことである。
多くの人が人生のある時期にモヤモヤするのは確かです。
だけど、生きづらさは、ただモヤモヤしていることを指すのではなく、慢性的にモヤモヤすることを指します。
そう、「慢性的」。ここがもうひとつのポイントです。
もう少しお付き合いください。次の章で詳しく説明したいと思います。
0 件のコメント:
コメントを投稿