2018年4月24日火曜日

「心理療法の人類学」入門セミナーのお知らせ



「心理療法家の人類学」刊行記念
心理療法の人類学」入門セミナー
―人類学はケアをいかに変えるか?

翻訳書「心理療法家の人類学ーこころの専門家はいかにして作られるのか」(誠信書房)の出版を記念して、「心理療法の人類学」入門セミナーを行います。

「心理療法とはいかなる人類学的営みであるのか?」「よりよき心理療法のために人類学は何をもたらすのか?」「心理療法家になることで私たちは何者になるのか」をテーマにた入門編です。心理療法を学び、実践する過程で私たちは様々な疑問と出会いますが、人類学はそれらに対して従来とは全く異なる光を当ててくれます。そして、そのことによって私たちの臨床実践は変わっていきます。

本ワークショップでは臨床心理学者と医療人類学者がコラボレーションして、「心理療法の医療人類学」の世界をひらきたいと思います。



日時 722日 10時から17(途中1時間休憩)
場所 NATULUCK茅場町新館 3階大会議室
料金 早割9000(531) 通常11000
定員 40(先着順)
講師 東畑開人(臨床心理学) 中藤信哉(臨床心理学) 磯野真穂(医療人類学)
対象者 心の治療に関心のある方





*当日、特別価格での書籍販売があります



趣旨 
 心理療法は、悩みや生きづらさを抱えるクライエントと心理療法家の間で営まれる治療的営みです。一方で、「心のケア」の歴史を考えたとき、心理療法は人類学的な営みでもあります。つまり、チンパンジー同士で行うハグから始まり、原始のシャーマン、夢見る神官、科学的医師が担ってきたケアの役割を、現代の心理療法家は引き継いでいるのです。そのような観点から見たとき、心理療法とはいかなる営みに映るのでしょうか?そして、そのような人類学的認識は心理療法に何をもたらすのでしょうか?

 講師の一人である東畑は『野の医者は笑う』、『日本のありふれた心理療法』、そして新刊となる翻訳書『心理療法家の人類学』という一連の著作を通して、「心理療法の人類学」というプロジェクトに取り組んできました。確かな実体を持つように見える心理療法を、人類学によって相対化することで、心理療法のよりよい実践を目指してきました。

 本ワークショップは、人類学的心理療法論について平易かつ総合的に解説したいと思います。いわば、この分野に関心を持つ人のための入門編です。

 さらに、本ワークショップでは人類学者である磯野真穂氏を対話相手としてお招きします。磯野氏はこれまで、摂食障害や、医療における不確実性といった心理療法とも馴染み深いテーマの探求を続けてこられました。人類学者との対話によって、心理療法をどこまで揺らすことができるのか?そして、そのことによってよりよいケアは可能になるのか?そうしたことを一日かけて考えてみたいと思います。

 本ワークショップを通じて、従来とは異なる心理療法論の全貌を露わにし、学派を超えた新しい心理療法の語り方を提示できればと考えています。現在心の治療に携わっておられる方、あるいはそれを学んでいる方、現在心の専門家の養成に携わっている方々、そして心理療法というものの不思議さに戸惑っておられる方々にとって、有意義な学びの時間にしたいと考えています。

スケジュール

1部 10時から12
ケサリードのための心理療法論
―ヘルス・ケア・システム理論ー

 人類学者レヴィ=ストロースは魔法を信じていないケサリードが、魔法使いのからくりを知ったことで大魔術師になっていくプロセスを描いています。本パートでは、ケサリードが魔法を学んだようにして、心理療法のことを学んでみたいと思います。

つまり、心理療法は人類学的に解剖して、さらにそこから逆算することで、よりよき心理療法はいかにして可能なのかを考えてみたいと思います。このとき、特に医療人類学の泰斗アーサー・クラインマンの「ヘルス・ケア・システム理論」に注目し、事例の提示を行いたいと思います。

2部 13時から1445
心理的治療はいかにして可能か?
-「心理療法家の人類学Ⅰ」ー
 私たちの抱える問題のほとんどが、生物-社会-心理の3つの次元が関わっているものであることはよく言われます。その上で、特に人間の生物学的な側面にアプローチしていくか、社会的環境にアプローチしていくか、あるいは心理的次元にアプローチしていくかに、それぞれの専門性が宿ると言えます。

 本パートでは、問題の心理的次元にアプローチすることがいかにして可能になるのかを人類学的に検討してみたいと思います。そこには治療者側の働きかけがあり、そして心理学的作業があります。そのプロセスを具体的な事例を出しながら、人類学者と共に検討したいと思います。

3部 15時から17
心理療法家とは何者か? ―「心理療法家の人類学Ⅱ」
 本ワークショップの最後は、心理療法家その人について人類学したいと思います。私たちは何者であるのか?なぜ私たちは心理療法家を目指したのか?そして心理療法家になることによって私たちの心はどのように変化してしまったのか?そういった問題について、人類学的に考えます。

 「心理療法家になる」とはある意味で、とても窮屈なものです。それは心理療法の訓練が、様々な仕掛けを通じて、私たちを特定の主体へと象るからです。そのような訓練の仕組みを人類学的に検討しながら、心理療法家とは何者かを見てみましょう。それは現在、訓練に携わっている方や、訓練を受けている人にとって、自分が何に参与しているのかを知る機会になると思われます。


講師紹介
東畑開人
1983年東京都生まれ。京都大学教育学部卒、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。沖縄の精神科クリニックでの勤務を経て、現在、十文字学園女子大学専任講師。博士(教育学)・臨床心理士。著書に『美と深層心理学』(京都大学学術出版会2012)、『野の医者は笑う―心の治療とは何か』(誠信書房2015)、『北山理論の発見』(共著・創元社2015)、『日本のありふれた心理療法―ローカルな日常臨床のための心理学と医療人類学』(誠信書房2017)。訳書にDavies『心理療法家の人類学―こころの専門家はいかにして作られるのか』(誠信書房 2018)

中藤信哉
1985年兵庫県生まれ。京都大学教育学部卒、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程研究指導認定退学。京都大学大学院教育学研究科附属臨床教育実践研究センター特定助教を経て、現在、京都大学学生総合支援センターカウンセリングルーム特定助教。博士(教育学)・臨床心理士。著書に『心理臨床と居場所』(創元社2017)。共訳書にDavies『心理療法家の人類学―こころの専門家はいかにして作られるのか』(誠信書房2018)。

磯野真穂
1976年長野県生まれ。オレゴン州立大学留学後、専攻を生理学から文化人類学に変更。早稲田大学文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)2001年よりシンガポール、2011年より日本に摂食障害の調査を開始。2011年から2016年まで漢方外来と循環器外来で不確実性をテーマにしたフィールドワークを実施。2016年より、「一億総やせたい社会を見つめる文化人類学ワークショップ・からだのシューレ」を開催。研究の関心は、身体、食、医療、科学技術。主な著書に『なぜふつうに食べられないのか拒食と過食の文化人類学』(春秋社)、『医療者が語る答えなき世界「いのちの守り人」の人類学』(ちくま新書)、“Fat Studies Reader(New York University Press,2009・分担執筆)など。


主催 白金高輪カウンセリングルーム 
協賛 誠信書房

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